媒酌人を引受けた人は、自分の立場が務まるかをまず見きわめて、それから、それに応じた範囲で媒酌人の役めをつとめることが大切です。今形式的な頼まれ媒酌人、形式的な頼まれ媒酌人も、むかしから存在していて、「杯仲人」(さかずきなこうどり香川県)とか「座敷仲人」(ざしきなこうど几三々九度の杯を郊わすときだげヽまたは座敷で仲人の座にすわるだけの媒酌人であったことを示し、あるいは婚礼の夜だけをもって仲人のつとめは終わりという「行灯ぎり」(あんどんぎり=山口県)といわれた媒酌人もいました。これらは、すでに橋渡しの仲人がべつにいたり、男女が恋愛から結ばれるにあたって、部落の長老や実力者がたのまれて結婚式をつかさどった例であり、今日、職場恋愛で結ばれたり、縁談がまとまった二人が、新しい世帯の出発に強力な庇護者となってもらうために職場の上役とか、同業者の大先輩、地域社会の実力者、知名人に表むきの媒酌人をたのむのとまったく同様な意味をもっていたのでした。恋愛から結ばれた若い二人のなかには、自分たちが好きで一緒になるのだから、べつに媒酌人なんか必要はないという人たちもいますが、そういうものではありません。婚姻届にも二名の証人の署名押印が必要であるように、結婚式にも立会人が必要ですし、ふたりが天下晴れて夫婦となったことを周囲の人たちに報告、夫婦として紹介してくれる人がなければ、世間的に認められるのはむずかしいことでしょう。第一、結婚式場でも結婚披露宴でも媒酌人がいないことにはかっこうがつきません。そのために、たとえ形式的でも媒酌人が必要ということになります。こういう場合の媒酌人のしごとは、二人の結婚が成立したことを証明し、新しい世帯の発生を確認してそれを周囲の人に報告し、紹介することが第一の目的です。つまり結婚式場で媒酌人の席に着いて、新郎新婦の三々九度の杯に立ち会うほか、結婚披露宴では新郎新婦をはさんでメインテーブルに着いて、媒酌人としてのあいさつをするのが、頼まれ媒酌人のもっとも必要な仕事であるといえましょう。