骨まで香るというのが凄い。ほかに丁子香や当帰、啓香など十種を材料にして作った丸薬を規定量、口に含むと、「当日は口が香るのに自分で気づき、五日で体が香るのがわかり、十日で衣服が香り、二十日で風に向かって行くと、風下の人に香りが聞きわけられ、二十五日で洗った手や顔から地面に落ちたしずくが香り、一月後には抱いた子供まで香る」などの処方もある。当時の香りはふつう、肌に直接つける今の香水と違って、肌に「移す」ものだった。香料をいぶす香炉の上にザルをかぶせ、その上に着物をかけて香りを移す。その「移り香」を楽しむものだったが、それがエスカレートして、体の芯から香ろう、香る体に改造しようとは、ほとんど光と芳香を放つといわれる仏になろうというのも同然の暴挙だが。こうまで努力して香るようにした体を、何に使おうというのだろう。やはり目的はひとつだろうなあ……。
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