高床式の住宅を思わせるものや、スマトラ地方にある棟が反り返っている屋根のものがあるが、これは観光客を意識して改築したものだろう。路地を行ったり来たり、走りまわる子どもとぶつかりそうになったり、ドブ板を踏み外しそうになったり、道ばたの珍しい野草に見とれたり、何軒かの家をのぞき、中を見せてもらった。こんな時、ロスメンの主人として顔を出すのは、たいていがそこの奥さんですこぶる愛想がよい。寝室や居間、台所から風呂場、トイレまで案内してくれ、ぜひ泊まりなさい、宿代も安くしますよ、いまいる客は品のいいオーストラリア人だよ、いやあれはニュージーランド人かな、と、しゃべりの途切れがない。しばらく歩いているうち、庭にヤシの葉が生い繁り、人工の柱にヒンズー寺院で見かけるゴテゴテした彫りものがある家が気に入り泊まることにした。部屋に案内してもらう時、女主人のうしろからのぞいた台所には、髪の生えたような赤いランブータンや、みかんのようなパッションフルーツが無造作にころがっていたが、少し干からびていたのが気になった。寝室は思っていたよりも広く、嬉しくなった。だが、風呂場は共同使用である。いわゆるマンディ(水浴び)式で、タイルのかめに入っている水を、何度も桶で身体にかけるやり方である。気をつけないと、水がめを浴槽と間違え入ってしまいそうになる。寝室にもどると甘い香りが漂っていた。香をたいてくれたのだろう。